2017年2月22日水曜日

ロンドンガールと夏目漱石

先日、買い逃していた小薮奈央さんの「fairground-ガーリーバイブル in London-」を古本屋さんで購入しました。


2013年発売当時、私は18歳でしたが、多分受験勉強の真っただ中で買いそびれていたのかもしれません。新品の在庫はどこを探してもなかったけど、3年ごしに手に入れられてとてもしあわせ。
小薮奈央さんを知ったときのことはよく覚えています。2010年か2011年の冬、本屋さんでふと手に取った「SWANSEA」のディレクターが彼女でした。SWANSEAは今でも時折開いて眺めてうっとりします。全2刊と短命だったのが悔やまれますが、中古で売っているのでガーリーファンはぜひ。

fairgroundは思っていたより分厚い本で、写真も活字もたっぷり。キュートでおしゃれなロンドンガールたちの紹介、20年前のmiu miuのアイテムを使ったスタイリングページ、小薮奈央さんのヴィンテージ私物紹介などなど。

ロンドンガールへのインタビューで興味深かったのは、「キュートで且つ自立している秘訣は何か?」という質問です。
ロンドンガールにしろパリジェンヌにしろ白人の女の子っていうのは、よく「白人コンプレックス」とかいって、スラリとしたスタイルや端正な顔立ちは我々日本人の憧れの対象であり、ファッションショーにしろ雑誌にしろとにかくなんでも絵になる、輝ける存在だ。そういう容姿への憧れのほかにも、なんだか彼女たちはみんな毅然としていて自分らしくあることを恐れていないようなところもうらやましい。昔そのことについて、白人は容姿がいいから自信に満ちているんだろうな、ぐらいに思っていたけど、ROOKIEを読んでそれが間違いだったと気が付いた。「自意識とどう付き合うか」「人目を気にしないためにはどうするか」といった記事は、こういった悩みはなにも私たちだけが抱えてるわけではなく世界共通なんだな、と私に気づかせてくれた。fairgroundを読んでさらに、彼女たちが私たちと異なるのは、そういう悩みに対し積極的に心の持ちようや考え方を発展させている点であるということにも気づいた。
この本に登場するロンドンガールたちはみんなそれぞれ、その難しそうな質問に堂々と答えています。いやな思いをしたくないばかりについ逃げ腰になっていた自分を恥じました。

ここで私はどうしても夏目漱石の「私の個人主義」を思い出さずにはいられない。私は特に読書家というわけではなく、むしろ読書量は人並みより少ないくらいです。夏目漱石だってこころと坊ちゃんしか読んだことがない。この学習院大学の学生向けに行われた漱石の講演内容を綴った書籍は、塾の先生か誰かから教わったんだと思います。高校生のころは読んでみてもあまりピンときませんでしたが、大学生になりいくつも悩みを抱えるようになった今、身に染みる言葉が多くやっと理解できました。要約するのは少々難しい気がしますが、この講演のなかで、漱石は大学を卒業後、不安を抱えながらも赴いたロンドン留学から帰ってきて、1年が経ってようやく、他人本位で不安定だった足場を自己本位というあり方によって固めたといいます。
「その時確かに握った自己が主で、他は賓であるという信念は、今日の私に非常の自信と安心を与えてくれました。」
「私のようにどこか突き抜けたくっても突き抜ける訳にも行かず、何か掴みたくっても薬缶頭を掴むようにつるつるして焦燥れったくなったりする人が多分あるだろうと思うのです。もし 自己に安心と自信がしっかり附随していないとしたならば、どうしても、一つ自分の鶴嘴で掘り当てるところまで進んで行かなくってはいけないでしょう。いけないというのは、もし掘りあてる事ができなかったなら、その人は生涯不愉快で、始終中腰になって世の中にまごまごしていなければならないからです。私のようなつまらないものでも、自分で自分が道をつけつつ進み得たという自覚があれば、私自身はそれで満足するつもりであります。」(一部改)


思うに、「西洋人がいいというものを鵜呑みにするのはおかしいじゃないか」という気付きから自己本位というあり方にたどり着いたとはいえ、やはりロンドンで直に感じた西洋人の自己本位な振る舞い、考え方に多かれ少なかれ影響されたのではなかろうか。それは無自覚であり、「西洋人は素晴らしい」と何もかも肯定、賞賛するような浅はかな考えからではなく、漱石が考えに考え抜いて偶然同じ点にたどり着いた、そんな感じではないだろうか。

ロンドンガールが同じように自己本位な生き方について自覚的に語っているので、この漱石の気付きは正しかったんだな、と思いました。

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